イベントの合間こそ艦これの本領 
2016/06/29 Wed. 21:27 [edit]
黒いのは誰だ -大淀通信室-
居酒屋鳳翔、常に危険に身をさらされる艦娘にとって数少ない泊地での憩いの場である。さほど大きくない店内は夜になるといつも満席だった。その一角、カウンター席で飲んでいた眼鏡の艦娘「大淀」はすでに出来上がりつつあった。
「だから皆して酷いんです! この前の作戦じゃ命令書を読み上げたら『うるさい』ですよ? 酷いじゃないですか。上から声だして読めって命令だから読んだのに」
疲れたサラリーマンのようにビールと焼き鳥を頬張りながら愚痴をこぼす。
「今日は絡むねぇ。いつも冷静なのに何かあった?」
一緒に来ていた明石もややタジタジである。
「でもさ。うちの提督はちゃんと聞いてくれたんだからいいじゃない」
「それもそうなんですけどぉ。他にもさ、やれ黒幕だのスパイだのと噂して……。私がどれほど苦労して提督の補佐をしていると思っているんだか」
「そんなこと誰も言ってないって」
「泊地じゃなくて、です。私外に出ることも多いんです。情報収集は常に心がけているからどうしてもそんな話が耳に入ってきてしまうんです」
「海軍は情報統制してるからねぇ。あ、ども」
明石は聞いているようで運ばれてきたししゃもに目を奪われる。
「わかります~」
突然、隣の席の鹿島が加わってきた。
「あら鹿島さん。貴女も何かあったのですか?」
「私、戦闘は苦手じゃないですか。だからその他で精一杯提督さんのお役に立とうと頑張っているんです」
「え~? 去年の秋は大淀と二人で潜水棲姫相手にフルボッコしたって噂だけど~?」
日本酒に切り替えた明石がホッケをつつきながらツッコむ。
「コホン、それは置いておきまして……。一生懸命頑張っていただけであざといとか裏が有るとか、挙句の果てにサークルクラッシャーとかまで」
「あぁ聞きますね」
「やっぱり大淀さんも知っているんですね……。酷くないですか」
「言わせたい人には言わせておけばいいのよ。提督はわかってくれてるんだし。だから二人共指輪も貰ったんでしょ?」
さっぱりした性格の明石のさっぱりした回答。
「最近こっちは肉体的に厳しいよ~? バケツ節約のために毎日夜勤やった後の日勤で休めるのは1800から2300だけよ」
それを聞いた鹿島はドン引きである。
「よく死にませんね……。ていうか夜勤の後の日勤ってどうなんですか」
「おおよど~、まだバケツ足りないの~?」
「あと400個くらいですね」
冷静に死の宣告である。
「きっつ~。あと2ヶ月位このシフトかぁ。ま~おかげで夜勤手当と時間外手当で『げっ』って額が振り込まれたけどさ~」
「ちなみにおいくらくらい……?」
恐る恐る鹿島が踏み込んでみる。
「耳貸して。手当だけで……」
「「げっ」」
それを聞いた二人は思わず声が漏れる。
「そういえば明日でしたっけ。朝潮さんの改装」
気を取り直して鹿島が尋ねる。
「そうですね。明石、準備は済んでますか?」
「もちろん。初の丁改装だからロールアウトまで緊張だけどね。でも早くお披露目したいくらいの出来よ」
「でもいいですよねぇ、改二。私達も改二来ないのでしょうか」
鹿島が遠い目をしてつぶやく。
「夢はありますが、当分は駆逐艦に力を入れそうな気配ですね」
その時、入り口の引き戸が遠慮がちに開けられ黒髪の少女が入ってきた。
「おや噂をすれば件の彼女が」
珍しげに明石が見ているとまっすぐに近づいてきた。
「どしたの?」
「伝令です! 工作艦明石、2330を持って航空母艦大鳳・葛城・瑞鳳の応急処置にあたれ、とのご命令です!」
「あちゃ~……今日は空母か~。艤装デリケートで気を使うのに。せっかくの誕生日のプレゼントがこれか~」
「ご愁傷様ですね」
大淀は心底そう思っていたが
「軽巡洋艦大淀、南方への哨戒任務。練習巡洋艦鹿島、夜間演習の教導も命令されています。以上、失礼します!」
朝潮は二人にも提督からのプレゼントを渡して帰っていった。

Illustrator :ひなた さん
黒いのは私でした
なんとなく居酒屋での日常を書こうと思ったら今日が明石の進水日だったのでブラックプレゼントを渡す流れになってしまいました。おめでとうございます。
バケツ節約のために毎日苦労をかけている明石さん。今日ももちろんその予定です。前は朝までに治らなければバケツ使っていたんですが春イベの後遺症が…。
でも明石さんも好きだからそのうち指輪も渡したいですねぇ。今97なので頑張ればいけなく無いですが、他にも牧場予定があったりするので当分先になりそうです。
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それぞれの想い 
2016/05/23 Mon. 21:32 [edit]
溝 -大淀通信室-
友軍を救出しに遠方まで進出した作戦はすでに目標を達成した。かつて無い大戦力に新種の深海棲艦が立ちふさがり、新しく戦力化された基地航空隊を持ってしても翻弄され、それでも尚僅かなチャンスを掴みとった。その作戦を指揮し続けた司令室は通常、作戦が終わればあまり使用されることはない。しかしここ数日提督は訪れていた。
提督は何度も繰り返し記録を見返していた。その中心は“中枢棲姫”と名付けられた深海棲艦を撃破した時のものだった。もう幾度再生したかを考えるのも難しくなってきた頃、司令室に一人の女性が入ってきた。
「提督、また見ていらしたのですか」
片手にはサインを貰うために持ってきた報告書のファイルを携えて大淀は声をかける。
「毎回撃破した時に奴らの残す言葉が気になっていてな。だが今回は何度聞いてもよくわからん」
提督は眉を寄せながら大淀の問いに答えた。
「『生まれた理由』、そして『成し遂げた』。何のことなんだ? 我々が奴を倒すまでに何かをしたのか。或いは倒されること自体を指しているのか」
「…………」
「そして倒しきれば『溶けていく』。これは新しい発見だった。いつも沈めてしまうか残骸は無視していたから不明だったが……。しかし『私も』は分かるが『世界も』『還っていく』とは一体。『世界に』ではなく『世界も』、か。あるべき世界があるということなのだろうか」
わけがわからない、という風に溜息を漏らしながらつぶやく。
「そして『ありがとう』ときやがった。誰に対してだ? やはり我々に対してと思うのが自然だが。まったく……やめてほしいものだ。戦いにくくなる。下手なこと言うと講和派が目をさますぞ」
「現状では言語を操れるのは一部、そして殆どが敵意となればそう簡単とは思えませんが……」
「皆がそう思ってくれればいいんだがな。まぁいい。それで、感謝の言葉と引き換えに救出出来たのはアイオワだったな。初の正真正銘の連合国側の艦、あれから彼女はどうしている? お前もよく一緒にいるだろ」
大淀はファイルから資料を引き当て答える。
「アイオワさんは演習や南方への哨戒任務に就き、順調に練度を上げています」
「いやぁそういうところじゃないよ。こちらの艦娘たちとうまくやってはいるのかな、とさ」
大淀はやや答えにくかったのでとぼけたふりをしたのだが、あっさりと追撃を食らってしまった。
「まぁ……明るい性格ですし大型艦の方とは割りとうまくやっているみたいです。最初は霧島さんとは一悶着あったみたいですが、金剛さんが取り持ってくれて今では問題ありません」
「その言い分だと小型艦はまだまだか。お前も思うところはあるだろう?」
その言葉に一瞬どう答えるべきか迷う。
「……確かに今までの海外艦とは違います。しかし私は彼女に沈められたわけでもありませんし」
「やはりその該当艦が問題だな。今後も米艦は増えていくだろうし……。仲良くする必要は無いだろうが避けたりはしてほしく無い」
「皆子供じゃありませんし、その辺は弁えていると思います。わだかまりを完全になくすにはもう少し時間がかかるのでしょうね」
提督も「わかっている」というように静かに頷いた。
「……せっかくだしアイオワだけじゃなく、もっといい戦いが出来た艦が来てほしいよな。ヨークタウンとかレキシントンとかさ。エンタープライズとかも盛り上がりそうだよなぁ!」
ともすれば沈みがちになりそうな雰囲気を提督は明るい声で吹き飛ばす。
「ほとんど会う前に沈んでいるじゃないですか。私は初対面ですよ」
大淀もそれに倣って明るく返す。今すぐどうにか出来る問題ではないのならば先を見るしか無いのだ。
「でもアリゾナとかは逆に対応に困るよな」
「いえいえ、それならまず英艦を……」
春の夜に艦隊のブレーン同士の話に花が咲く……。

Illustrator :ひなた さん
Iowaどうです?
仲良くやっていますか?
うちではもう少し時間がかかりそうです。仲悪いわけではないんですけどね。駆逐艦とか来てくれるとまた反応も変わるのかな。
でもまぁ仲良くならなきゃいけないとも本当に思っています。170人もいて、国も違えば合わない人もいて当然。同じ組織にいるのだからいがみ合ったり、足を引っ張らなければいいと思うのはロマンに欠けるかな。
それでも仲いい方がいいには決まってます。徐々に新しい関係を築いていってもらえたらいいですね。
作中でも書きましたが欲しいのは空母勢。性能面とかよりもまず激闘した彼女たちは会ってみたいですね。きっと良いキャラしてそうだと思うし。性能面ならEssexクラスは欲しい、がその頃はもう一方的ですらあったからなぁ。妄想しづらい。
次回はまた米艦か、それとも独か伊か。英艦という可能性はあるのか。お迎えする準備だけはしとかないとね。
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ケッコン生活 
2016/05/01 Sun. 20:31 [edit]
すてきな奥さん -大淀通信室-
艦隊は何ヶ月かに一度、大きな作戦を行う。多数の艦娘が絶え間なく出撃し、時に連合艦隊を組み、“姫”や“水鬼”などと呼ばれる上位種と死闘を繰り広げる。その時がいつ訪れてもいいように常に準備と対策を練るのが大淀の仕事だった。その準備は作戦終了直後から、或いは作戦中から始まり、およそ暇とは無縁の毎日を過ごしていた。
しかしそんな大淀にもほんの数日、凪いだ海のように静かに過ごせる時が訪れる。それは決まって作戦直前だった。
(今回もやるべきことは全て終わらせられましたね……)
毎日頭と身体を使い艦隊を勝利に導くべく働いた大淀には、疲労感とともに満足感を感じられていた。この段階になると艦隊は試合前のボクサーが練習と減量で疲弊した身体を休めるが如く、徐々に休みをとるように命じられていた。大淀も先刻、数日の休暇が与えられ自由の身になったばかりだった。作戦が始まれば再び編成や攻略に酷使されるため休むことは命令であり、義務とされている。
(とは言え何をしましょう?)
いつもは巡検と称して散歩に出かけたりもしていたが、今日の分はすでに終えてしまっている。
(提督はまだ忙しく出張していますし……。あ、提督の……)
大淀はやることを思いつき足早に執務室へと向かった。
提督執務室、出張中で主のいないその部屋には「不在」の札がかけられている。今日は秘書艦も提督に付き添っているため文字通り部屋には誰もいなかった。大淀は気にせず執務机へと足を運ぶ。そこには飲みかけのコーヒーが入ったマグカップや機密性の低い書類が山積みにされていた。普段は冗談は言いつつも几帳面な提督は整理された机で執務することを良しとしていたが、作戦前となるとそうも言っていられないらしい。
(よし、片付けてしまいましょう!)
普通の艦娘に提督の執務机をいじることなど許されてはいない。しかし大淀は極めて高度な機密に触れられる権限があり、またいつも提督とともに仕事をしているため何をどこへしまえばいいかを完璧に把握していたため躊躇せずにその判断を下した。
一度判断を下してしまえば後は早い。食器類は給湯室で洗い、廃棄待ちの書類はシュレッダーへ。過去の資料は再び所定のファイルへと戻す。机の上の山はみるみるうちに掘削され、平地へと戻っていく。しかしあるものを発掘した時、その手が止まった。
(何かしら、これ)
大きさはA4サイズほど。表紙と裏表紙がカラー印刷された数十ページくらいの本が二冊。大淀は見覚えはないもののどこかで聞いたことがあったのを思い出していた。
(あれは確か、そう秋雲さんが話していたものだったかしら。ということはこれが噂の薄い本、ですか?)
薄い本、という俗称で呼ばれるその本は正式には同人誌と呼ばれるものだった。艦娘の同人誌は人気のジャンルであり、多数の本が制作され売り買いされていた。政府も広報活動の一環と考えある程度は黙認している。機密が多い艦娘故に実際とは異なることが描かれていることもあるが、それすら楽しんでいる雰囲気があった。
(でも何でこんなところに……? それに確か薄い本というのは大人向けのものがあるとか)
そう考えだすと段々と恥ずかしさがこみ上げてきた。
(まぁ提督も男性ですし、構わないのですが何も執務室で……)
早く仕舞ってしまおうと思うものの、目線は表紙から外せなかった。それはきっと表紙に描かれていたのが大淀自身であり、そのタイトルに惹かれたからだろう。
(す、少しだけなら)
大淀は抗うことが出来ず、ついに表紙をめくってしまう。
――十数分後
ガチャっと勢い良く扉が開け放たれ男が入ってきた。
「ひゃっ!?」
扉が開くまで気が付かなかった大淀は心臓が口から出そうになるほど驚いた。
「何だ大淀か。何をそんなに驚いている。慎重なお前が珍しい」
「い、いえ、何でもありません」
提督は制帽をかけてから執務机へと近づいていく。
「おお、整理してくれたのか。助かるよ。最近暇がなくて、な……。お、大淀、その手に持っているものは!?」
「いえ、こ、これはどこへしまえばいいのでしょう!?」
上ずった声が静かな執務室にやけに響いた。
「……読んだのか?」
「えと、その……はい……」
この期に及んで言い逃れは出来ない。俯くしかなかった。
「ふぅ、迂闊だった。どこに置いたか分からなくなっていたが、こんなところに埋まっていたとは」
提督はそう言いながら移動し窓に向かい、大淀から背を向けた。
(やっぱり人の物を勝手に見るべきではありませんでした。幻滅されたでしょうか)
若干の後悔の念を抱きながら提督の後ろ姿を見つめる。しかしそこで違和感に気づいた。この角度では表情こそ読めないものの、提督の耳は赤く染まっていた。
(……あれ? 照れて、いらっしゃる?)
それを見て意を決して尋ねる。
「あの、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「一つだけなら答えてやる」
提督は外を眺めながら答える。
「何でそのようなものがここに? ……いえ、質問を変えます」
一瞬間を置いて復活してきた頭で考える。
(これでははぐらかされますね。なら質問は……)
「何でそのような内容のものを提督が?」
「答えにくいものに変えてきたな。ん~、どう答えたものか」
ようやく提督は振り返り大淀を見つめ返した。
「まぁ大淀とそういう未来を過ごすのもいいなと思ってつい買ってしまったのだよ」
「それは、その……退役後も、ということでしょうか?」
「質問は一つと言ったはずだ」
頭を掻きながらそう答えた提督の耳は更に赤くなっていたが、それを見た大淀もまた赤く染まっていった。

Illustrator :ひなた さん
えっちなのはいけないとおもいます
いやいけなくはないですね。TPOさえわきまえれば。本日二本目の更新です。
久々の執筆。秋雲は同人誌とは言っていないけど原稿書いているし同人誌くらい出してもいいですよね。ちなみに提督の机にあった同人誌がこちらの二冊。
最近まとめサイトで見たのをきっかけにpixivに行ってみたらすでにフォローしてあって驚きました。自分のことながらいつの間に。大淀株が急上昇する前から抑えてあったとは…。
ここにあるのはサンプルですが、今読むとどうしても全部読みたくなる。ということで早速メロンでDL。便利な時代ですね。
底なし沼の同人誌は手を出さないようにしていますが、貴重な大淀本には逆らえませんでした。ピンで描かれている本の少なさ。もっと増えろ!
内容的には全く大人向け要素はないのでそんなに赤くなるものでもありません。何気ない夫婦生活が描かれているだけ。でもそうなりたい願望のある2人なら、という感じで妄想してみました。
こういう何気ない日常が描かれている同人、大好物です。特別なことはなくてもいいから、ふとしたことで幸せを噛み締められるようなものをもっと読みたい。おすすめないですか?
あぁケッコンしてこんな毎日送ってみたい…。
ゼロアワーまで24時間を切ったこの段階でこんなもの書いていていいのかって? 暇なんだからいいのです!
あと24時間(+ロスタイム)でいよいよ春イベなんですねぇ。頑張りましょー。
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華 
2016/01/03 Sun. 17:50 [edit]
ゆく年くる年 -大淀通信室-
一月三日、正月三が日はサービス業など一部を除けば休みが一般的だ。しかし大淀が所属するところは会社ではなく海軍だった。二日まで休みだったというのはむしろ幸運である。今泊地は艦娘とそれが奏でる音に溢れていた。
つい前日まで物音ひとつなかった工廠も、大浴場たるドックも、断片防御用の装甲板が施された出撃用の波止場も今では影が慌ただしくひっきりなしに動いている。
(今年も一年始まりますね。あんなに楽しく騒いでいたのがはるか昔のようです……)
数日前――
年の瀬が押し迫る中、大掃除に正月準備が行われていた。前の年に張り切って掃除を行ったある駆逐艦はまた箒を片手に文句を言いつつもきっちりと進めていっていた。そんな姿をある者は優しく温かい目で、ある者は負けじと対抗心を燃やし掃除に励む。間宮食堂では料理の腕のたつ艦娘たちが集まり大量のお節が「生産」されていた。160人分以上のお節はもはやライン工場を思わせる忙しさとなる。
師走の名が示す通りの忙しさで時は流れ、大晦日のヒトロクサンマルに最後の遠征艦隊の帰還をもってその年の作戦は全て終了となった。最低限のアラート待機や警備の艦娘を除いて待ちに待った冬休みへと突入した。
冬休みとはいえ戦時下においては気軽に内地へといけるわけもなく、精々が近くへの上陸のみ許される。各々が提督への挨拶を済ませ、上陸したり寮でゆっくりしたりと休みを満喫し始める。
「提督、今年もお疲れ様でした」
「あぁ。大淀も重責を負う役職に前線へとお疲れだった。少しの間存分に休んでくれ」
提督は最後の仕事、お年玉をポチ袋へ詰める重要なミッションを遂行中だった。毎年冬の賞与の短い命はお年玉の露と消えるらしい。駆逐艦だけでも艦隊の半分を占めるのだから提督業も大変である。
夜のメニューは年越し蕎麦一択。好きな天ぷらを選んでいくスタイルで、やはり一番人気は海老天だった。この時から終わりなき宴会がスタートする。艦娘が交代で台所に立ち、絶え間なく運ばれてくる料理や酒。何時参加しようと自由で何時抜けるのも自由。そしていつもいる隼鷹と愉快な飲み仲間たち。それを見ながら大淀と少数の艦娘たちは年明けと同時にその場を立ち去った。
年が明けてからの準備となったのでだいぶ深夜遅くにはなってしまったものの着替えを終えて再び宴の席へと戻る。多数の艦娘の相手をしてすでに出来上がっている提督へ新年の挨拶をする。
「あけましておめでとうございます。本年もどうぞ、よろしくお願い致します」
「おめでとう。こちらこそよろしくお願いする。今年も期待しているよ」
他の艦娘も代わる代わる挨拶を済ませ、仲の良い艦娘のところへ散らばっていった。
「今年も晴れ着姿が多くて華やかでいいものだな。戦時下であっても心が休まる」
「そうですね。戦争は何時終わるかわかりませんが、来年も皆で着られることを願います」
「しかし目の保養になるなぁ。肌色率が高ければいいものではない、と言ったのはどこの偉い人だったかな」
「もう、提督!」
「だが大淀、お前も似合っていると思うよ。綺麗な黒髪に着物はよく似合う。スタイルいいしな」
「……もう!」
それから二日までは宴会場の明かりが落ちることはなかった。大淀も袖を縛り少しの間であったが台所に立った。台所で一緒になった瑞鳳の作る伊達巻が美味しかったのが印象的だった。
そして、今日――
提督の訓示から始まり、艦隊として一年がスタートした。遠征艦隊はまた休みなく外洋を進み、演習に汗を流し、敵勢力下で鉄と火薬にまみれる……。
(今年も誰も沈まずに大禍なく過ごしたいですね)
大淀は早くも埋まっていく出撃記録を書きながら願った。

Illustrator :ひなた さん
新しい一年に
我が泊地もようやくスタートしました。二日まで演習すらしなかったので皆体がなまっていることでしょう。出撃も当然しなかったので戦果はゼロ。14000位くらいまで落ち、久々に少将に降格させられました。EOやマンスリー、正月任務とやること多いですね。明日までには片付けたいところです。
艦娘たちはどんな正月を過ごしたのでしょうか。楽しめていたらいいのですけどね。酒飲みと寝正月勢は想像しやすいですが。
晴れ着mode
今日になってようやく晴れ着と限定ボイスを堪能できています。やっぱり着物っていいですよね。
秋津洲を見たとき「うるせぇ、エビフライぶつけんぞ!」と頭のなかで何かが囁いたのは秘密。中破絵の表情は素晴らしいですけどね。
そこで久々のアンケート。どの晴れ着modeが好きですか?

私は大淀・大鯨/龍鳳・秋津洲かなぁ?扶桑姉様もいいし山城の中破はおいしいと思うけど。
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女の戦い 
2015/12/28 Mon. 21:03 [edit]
新鋭艦対策会議 -大淀通信室-
提督執務室や地下司令室が存在する泊地のメインとなる建物、その二階には第一会議室が存在する。約50人が同時に会議が出来る広さを持つその部屋は泊地で最大の会議室であり、そこへ30人の艦娘が集っていた。照明の殆どが落とされ薄暗い室内はプロジェクターが映し出す資料映像が明るく映しだされていた。そこには「新鋭艦対策会議」と書かれている。
扉の外にもタイトルが掲げられ「練度99以下立入禁止」の看板が立てられている。通常よりもセキュリティクリアランスの高い会議に前を通りかかる艦娘は邪魔をしないようにと静かに、素早く通り過ぎる。
「お忙しいところお集まり頂きありがとうございます。それでは会議を始めさせていただきます」
大淀は全員が揃ったところを見てプレゼン用資料をスライドさせて開始させる。
「あれ……? 鹿島さんがまだ来ていらっしゃいませんが?」
唯一この場にいないケッコン艦が不在なのを見て榛名が声をあげる。
「秘書課所属が全員この場にいるので臨時で秘書艦をお願いしてきました」
それに対し加賀が告げる。榛名はまだ「いいのでしょうか」と小さい声を上げていたが大淀は始めることにした。
「御存知の通りここにいる艦は全員指輪持ちですが、最近勢力図を大きく乱す新鋭艦が登場しました」
次頁へ資料をめくると顔写真が大きく映しだされる。
「はい、鹿島さんです。最近提督は鹿島さんのお相手ばかりしています。これは今までにはなかったこと。何か対策を打たねばなりません」
「そうは言ってももう指輪も持っているじゃない。同じカッコカリ組だしどうしようもないんじゃないの~?」
暗い室内でも綺麗な髪の色が分かる愛宕が反論する。
「そうですね。誰を選ぶかは提督の自由ですし、彼女に対しても特に何も出来ないでしょう。しかしこれを見てください」
次の資料には数字が並んでいた。
「これは否ケッコン艦達によるケッコンカッコマジが実装された場合提督が誰を選ぶかのオッズ表です」
存在は知っていても誰もその数値を教えてくれない資料に『オー』『どこから入手したんだ』と声が漏れる。
「残念ながら2週間ほど前のデータですので今は変わっていると思われます」

「わずか半月で4位に食い込む早さ。驚異的です。今では大和さんも抜かれているかもしれません」
その言葉に大和も表情が固くなる。
「もちろんこれは提督自身の評価ではありません。しかし外部からはそう見られているということは自覚すべきことでしょう。ここにいる30人は仲間であると同時にライバルとなります。ですがこれは協力して対策案を出すべきだと考えます」
「対策案っても何かある~? 色仕掛け、とか?」
鈴谷がニヤニヤしながら発言する。しかし色仕掛けがあまり有効打ではないことは全員が承知していた。ここの提督は多くの艦を可愛がる一方で、誰であれある一線以上は手を出さなかった。軽々しくすることではない、もしケッコンカッコマジがあるとすればその時だけだ、が彼がケッコン艦に語る言葉だった。それ故に事情を知らぬ否ケッコン艦からは提督不能説も囁かれることになった。
「発言、よろしいでしょうか」
浜風が手を挙げる。
「提督は秋祭りの時に浴衣姿に大変喜ばれていました。普段と違う服装でアピールするというのはどうでしょう?」
「そうですね。私もクリスマス衣装は褒めていただきました。有効かもしれません」
「でも鹿島さんも緊急で衣装貰ってアピールしてるっぽい!」
「私はそもそも衣装を貰えたことがありませんし……」
夕立と大鳳がそれぞれ反論する。
「それではやはり話す内容で変化を……」
結論の出ない会議で師走の終盤は過ぎていく――
「ところで今日は皆見ないけどどこ行ったんだ? 鹿島知っているか?」
「いいえ、何しているのでしょう? 私は提督さんといられて楽しいのですけど、うふふ♪」

Illustrator :ひなた さん
ドロドロの戦いに?
ならないといいなぁ。31人もケッコン艦がいたらリアルの人間関係なら怖いことになっていそうです。仲良くやっているといいのだけれど。側室制度があったとしてもまさに大奥ですから油断は出来ません。ところで夕立は「っぽい」ってつけるだけでわかるから扱いやすいですね。真面目風な会議に見せてとても不真面目な泊地の1日。平和ですね。なんとなく大淀さんはたまにちょっと抜けたことを大真面目な顔で考えたりしそうなイメージ。ちょっとぐらい隙がある方がいいですけどね。そして結局一人勝ちの鹿島。
ケッコンカッコマジが実装されたら誰を選ぶか決めていますか?私はもちろん金剛、と思っていたのに急速に迫りつつある新星に揺れ動かされつつあります。金剛ちゃんにも限定グラでも来ればいいのに。限定ボイスはどうもハイテンションばかりになってしまっていますし。晴れ着modeでまさかの金剛ちゃん来たり…しませんよね。
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